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中川奈緒美(私と音楽).jpg

「ブラームスと間奏曲」  中川奈緒美 さん

【中川奈緒美(なかがわなおみ)さんプロフィール】
福岡市出身、所沢市在住。
3歳より高校までピアノを続けたが、音大は受験せず…。
一方、結婚・出産後に突然歌に目覚め、今では常に3つ以上の合唱団をかけもちしている。
教育関係の職に就いてからは、所沢市の音楽活動支援に喜びと意義を感じている。

写真:合唱の演奏会を終えて家族と

中川さん(楽譜).jpg

♪♪ 曲の間の演奏ではない「間奏曲」? ♪♪

「間奏曲」の定義は、文字通り「曲と曲の間」に演奏される小品(たいていの場合)である。(Wikipediaによれば、「間に演奏される経過的な楽曲」だそうだ。)
有名なところでは、歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲がある。瞑想的な美しさを持つこの曲は、ドラマティックな物語の中にあって、一時のあいだ心を鎮めるかのように演奏される。
だが、若い頃の私は、「第九」や「英雄ポロネーズ」みたいな大曲ほど名曲だと信じていたところがあって、間奏曲のような小品には見向きもしなかった。
 
ブラームスは晩年になって、ピアノのための間奏曲をいくつか書いているのだが、それらは不思議なことに間奏曲と言いつつ「何かと何かの曲の間」に演奏されるためのものではない。
なのになぜ、ブラームスはそれらを「間奏曲」と名づけたのだろうか?

もう6,7年も前になるだろうか。清水和音氏のピアノコンサートにミューズまで足を運んだときのことだ。
「月光」「悲愴」といった、有名どころのピアノソナタ中心の、オールベートーヴェンプログラムだった。盛り上げるところはきっちりと盛り上げてくる、ある意味職人気質の充実した演奏。私は重厚な世界に心ゆくまで浸った。

ブラームス.jpg

♪♪ 「物語と物語の間」を奏でる間奏曲 ♪♪

そして、ドラマティックなプログラムが終わった後に、清水氏がアンコールで弾いたのは、ブラームスの間奏曲op118-2だった。
まるで、重厚な物語を読み終えた後、どこからか聞こえてくる甘く静かなメロディーに気づいたときのような気分…聞き終えて、私は静かに、そして夢見心地でまだ明るい会場の外へと出たのだった。

そのとき思った。
ブラームスの間奏曲は「音楽と音楽の間」ではなく、「物語と物語の間」に演奏されるために作られたのではないかと。
人はみな、それぞれの物語の中を生きている。独立して作られた「間奏曲」の前後にあるものは、なにも音楽である必要はなかったのだ。

その間奏曲はきっと、聞く人にとっても演奏する人にとっても、唯一無二の味わいを持つものになるだろう。
また、それぞれに重ねてきた物語が増えるに連れて、間奏曲も味わい深いものになるのだろう。
それに気づいたとき、ブラームスがこの曲中で幾度となく用いている「espr.(エスプレッシーヴォ・表情豊かに)」の意味が、より胸に迫ってくる気がするのだ。